「行くぞ!」
娘がそう言って間合いを詰めようとするが杖を突き出して、容易に懐を許さない。
「く。」
杖を摺りあげて懐に飛び込もうとするのを、小手を抑えていなす。
「むぅ!」
振り下ろそうとする腕を絡め、太刀筋を逸らしてかわす。
間合いがつかみづらい上に、ことごとく俺の杖に太刀を押さえ込まれているうちに、娘の目の色がどんどん危険なものに変わっていく。
「ふ!」
いらだちが精妙であるはずの娘の太刀筋を、若干ながら粗いものにしていく。
好機は近かった。
「…」
杖の先を若干鈍らせて誘いをかける。
最初ならば乗ってこなかったのであろうが、散々焦らしてからの誘いに娘は飛びついた。
「やっ!」
先刻見た脚への薙ぎが来る。
「!」
わかっていても内心冷や汗が出た。
脚を引いてすんでの所で太刀をかわす。
ついで二の太刀が降ってくる前に杖を繰り出して、娘の肩をしたたかに突く。
「ぐぅっ!」
振り下ろすことができずに間合いを離したところに追いすがり、小手をしたたかに打ったところで勝負はついた。
「う、ぐぅ…」
刀を取り落とし、その場にがくりと娘が座り込む。
息を殺してはいるが、突かれた肩も打たれた小手もぐったりと垂れ、手応え通りの衝撃があったことを俺に教える。
「おまえの負けだな。辻斬り娘。」
刀を杖で遠ざけ、脇差しなどを持っていないことを確かめて目の前に杖を突き出す。
「く…役人に突き出すくらいなら、殺せ。」
相当痛いのか涙目になり、脂汗を垂らしながら娘がうめく。
「杖術は不殺の術だ。」
教え込まれたことがふと口をつく。
相手が抵抗できなくなったなら、それ以上杖を振るうべきではない。
「…いやだ…磔や下手人にされるなど…」
ぶつぶつと娘がつぶやく。
剣に倒れるのは本望なのだろうが、罪人としては死にたくないらしい。
勝手な言いぐさだが、その気持ちは理解はできる。
「殺してくれ…後生だ…殺してくれ…」
哀れな声で哀願してくる。
そのすがりつくような目を見ているうち、褌が破れそうなほどの淫欲が一気に襲ってくる。
真剣勝負を初めて経験した夜から、命をかけたやりとりを終えたあとはいつもこうだった。
まして、今夜は女郎買いがばれて閉じこめられているのを抜け出して、どうにもならないほどの猛りを処理しようとしていた矢先だった。
「来い。」
娘の腕を強引に引き、手近にあった破れ寺に引き込む。
「な、なにを!…ぐ、い、いた!」
本能的な恐怖を感じて娘が逃れようとするが、骨が痛んだ腕を引かれてはどうにもならない。
「死ぬ覚悟があるのなら、たいていのことはどうってことないだろうさ。」
月明かりの下、怯えの色を浮かべ始めたりりしい娘の顔は、俺の獣欲を昂らせるのに十二分すぎる美しさだった。
剣術娘さんとりあえず成敗完了〜
この後とどめのきつい一撃…ではすまなそうですがwを一番大事なところに食らってしまいます…
ということでシリーズになりそうですww