今年もこの日がやってきた。
…そう、バレンタインデーだ。
これまで野獣のようにケンカに明け暮れてきた俺に、チョコレートをくれる女なんていなかった。
まあ、義理チョコってヤツはもらったこともあったけど。
でも、今年は違う。
そう、俺にはいいんちょがいるのだ!
「なに?良一くん。」
朝、期待して学校に行った俺に投げかけられたのはあまりに無情なその言葉だった。
「今日は忙しいから、また後でね。」
めちゃくちゃつれない。
昨日も楽しく遊んだし、別に怒ってる風でもないから、嫌われたワケではないと思うのだが、あまりにつれない。
「良一ぃ、嫌われたのか?」
へらへら笑いかけてくる悪友。
「るせぇ!」
異常にいらいらしたまま、その日は放課後になっていた。
一人で帰る帰り道。
「ただいま。」
誰もいない家。
いいんちょに電話しようとして、なぜかためらわれる。
考えてみれば、彼女にはめちゃくちゃやっていた。
最初も無理やりだったし、ちゃんと付き合いはじめてからも、ヤルことばっかり考えてた。
いろいろ考えはじめるともう止まらなかった。
「…はぁ…」
自分の酷さにため息をついたその瞬間、俺の部屋のドアがいきなりノックされた。
「良一くん?いないの?」
いいんちょだった。
「あ、いる、いるよ!」
あわてて返事を返してドアをあけると、いつもの優しい微笑みのいいんちょ。
「ふふっ、今日は準備があったから忙しかったんだ。」
部屋に入ってきて、いつも通りの口調でいいんちょが話しかけてくれる。
「…はぁい、若葉の気持ち、めしあがれ。」
いいんちょがまとっていた服を脱ぎ去る。
大きな胸に張り付いてるハート型のチョコレート。
「いいんちょおおおぉおっ!」
俺は恥も外聞もなくいいんちょを抱きしめ、チョコレートに口づけていた。
「きゃっ!どうしたの?良一くん!?」
びっくりしたような声を上げてから、俺の頭を優しくいいんちょが撫でてくれる。
「すき、だよ…若葉…」
そのチョコは、ちょっとだけしょっぱい涙の味がした…
シュウさんのところで描きました。
バレンタインらしく甘々で…
でも私は今年もビターなバレンタイン(笑泣)