退魔士出産 投稿者:ヘルマスター


再び三奈が意識を取り戻したのは、自宅の自分の部屋だった。
「あら、気がついたの」
側には母であり、師匠でもある緋炎院絵真がいた。
「お、おかあさま、わ、わたし・・・」
「いいのよ三奈、全て終わったんだから」
「お母様、お母様ーー」
三奈は母の胸に取りすがり、泣き崩れた。
母はそんな娘を優しく抱きしめた。

その後三奈は一週間ほど寝込んだが、徐々に体力を取り戻し、一ヶ月もすると退魔士としての仕事もこなすようになった。
全て終わったかに見えた。

「あれ、まただわ」
三奈は下着を見つめて、首をかしげていた。
下着がおりもので汚れていたのだ。
以前はそんな事はなかったのだが、最近は白いどろっとしたおりもので、下着を汚す事が多くなった。
そして、異変は夕食時にも起こった。
ご飯を食べようとした時に、臭いでむせてしまったのだ。
三奈は食事のたびに吐くようになった。
三ヶ月もすると、今度は逆に食欲が出てきた。
四六時中何かを食べてないと、落ち着かなくなってしまったのだ。

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その日も、ファーストフード店で友達と一緒に、ハンバーガーを食べていた。
「ねえ三奈、ちょっといくら何でも食べすぎだよ」
「そうよ、お昼だって弁当の他にパン二つも食べたし」
「そうなんだけど、本当にお腹すいちゃってしょうがないのよ」
「ふーん、まあいいけどね、あとで後悔しても知らないよ」
「そう、そう、体重計を見て腰抜かすわよ」
あっはははは
とその瞬間、友達の一人が顔をしかめた。
「ねえ三奈、ナプキン持ってない、急に始まったみたいでさ」
「そうなの、ゴメンきょうもってないや」
「ナプキンならわたしの使いなよ」
「ありがと、早速使わせてもらうよ」
そういってトイレへと駆け込んだ。
「生理て本当に憂鬱だよね、急にはじまるしさ」
「そうだよね、月に一回は必ず来るし、今月は来ないなと油断してると来るしね」
「ほんと憂鬱だよ」
と相づちをうったとき、ふと気がついた。
自分に生理が全く来てない事を。
以前から不定期だったが、4ヶ月以上も来てないのは初めてだった。
「どうしたの三奈、急に押し黙っちゃって」
「ウン、その・・・何でもないよ」
三奈は急速に自分の中に不安が広がるのを感じた。

その日の夜、三奈は風呂場で自分のお腹を見てみた。
気のせいか、なんだかお腹がふくれてるように見えた。
触ってみると、ポコンと子宮の辺りがふくらんでるのが感じられた。
「こんな・・・こんなの嘘だよ・・・」
生理がこないのは遅れてるだけ、お腹がふくれてるのは食べ過ぎただけ。
絶対にそんなわけない。
三奈は頭の中から、その恐ろしい可能性を打ち消そうとした。

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しかし、現実は残酷だった。
三奈のお腹はふくれ続け、生理は来なかった。
幸い、季節が夏から秋にかけての時期だったので、服で何とかごまかすことができた。
人前ではお腹を引っ込めて、なんとか目立たないように過ごした。
着替えをする時も、出来るだけ一人になるようにした。
お腹以上にふくれたのが胸だった。
スポーツブラでも大きかったのが、八ヶ月目ぐらいになるとCカップまで大きくなった。
ある時、気がつかないうちに服が濡れていることがあった。
母乳が自然に滲み出たようだ。
それ以来、ブラジャーにガーゼを当てるようになった。
九ヶ月すぎた時、胎動を感じるようになった。
お腹に手を当てた時、確かに生き物の存在を感じた。
本来なら、女にとって最高の感覚であるが、三奈には嫌悪感しか感じなかった。
何度か母や姉に相談しようと思ったが、どうしても踏ん切りがつかなかった。

そして運命の日が来た。
その日、前日から続いていた胎動がなくなり痛みも感じなくなったから、出産はまだ先だと思った。
しかし、学校から帰る途中で、激しい腹痛に襲われた。
あまりの痛みに、歩くことさえままならなかった。
あわてて近くの公園の女子トイレに駆け込んだ。
トイレの鍵を閉めたと同時に、バシャという水音がした。
破水したのだ。
三奈は声を殺して、必死にいきんだ。
子宮はなかなか開かず、気の遠くなるような痛みばかりが襲った。
3時間後、ようやくズリズリと子宮から何かが出てくる感覚が伝わってきた。
頭が出る瞬間、最大の痛みが三奈を襲った。
「うぎゃあああああああああ」
あまりの痛みに、大声をあげた。
股間から血が吹き出すと同時に、人とも獣ともつかぬ異形の赤ん坊が産まれた。
「これが、わたしの赤ちゃん・・・」
三奈とは母子とは思えぬほど似ていなかったが、臍の緒で三奈とつながっていた。
「うぐぅ・・・」
三奈が臍の緒を引っ張ると、胎内から胎盤が出てきた。
臍の緒を口でかみちぎると、胎盤をトイレで流した。
最初は、産むと同時に殺そうと思った。
相手は憎むべき妖魔の子、愛情など感じるはずはなかった。
しかし、弱々しく泣く赤ん坊を見てると、そんな気は霧散した。
赤ん坊をタオルでくるむと、上着を脱いで乳房を赤ん坊の口元に押しつけた。
赤ん坊は弱々しくも、少しずつ母乳を飲み始めた。
三奈は何とかこの赤ん坊を育て上げようと思った。

数年後、半妖と人間の二人組の退魔士が活躍することになるのは、また別の話である。


ヘルマスターさんの3作目です。
2作目の続きで、とうとう赤ちゃんまで産んじゃいます。
お腹の中の赤ちゃんが育っていってしまうのをどうしようもできないのが、可哀想だけども、萌えますね〜
いつもありがとうございます!

ぎゃらり〜へ