貴族の息子と帝国皇女の語り(前) 投稿者:K

千年の時を経て、現世のマルディアスに復活しようと目論んだ邪神、サルーイン。
その野望を打ち砕いたのは、生まれも歳も違う8人の男女と多くの仲間達でした。
彼らは運命に翻弄されながらも冒険を重ねるごとに成長し、神々の長エロールが残した10個のディステニィストーンを手に、サルーインに戦いを挑んだのです。
その英雄と仲間達が今、とある町のパブでその喜びをたたえあっています。
彼らは今、どんな話で盛り上がっているのでしょうか?

シフ「アル、アンタまだ女とヤった事がないんだってねぇ!」
アルベルト「ぶっ!・・・シフ、何ですかいきなり?!」
辺境の地バルハラントに住むバルハル族の戦士、シフが今は亡きローザリアのイスマス公爵ルドルフの息子、アルベルトにとんでもない話をつきかけてきたのが今回の語りの発端ともいえます。
シフ「ジャミルから聞いたよ。アンタ、ミルザブールの城で泊まってる時に、隣の部屋でラファエルとコンスタンツがヤってる声聞いて顔真っ赤にしてたって話じゃないか。」
アルベルト「そっ、それは、部屋の壁が薄くてほとんどモロに聞こえたからで、・・・その・・・」
ジャミル「アル、嘘はよくないなぁ。それに一人でやってたんだろ、アレ。俺は見てたから、もう弁解の余地は無いぜ。」
アルベルト「?!、ジャミル、見てたんですか?!」
彼の隣の席で酒を飲み交わしていた南エスタミル生まれの盗賊、ジャミルが赤面したアルベルトに声を掛けます。
バーバラ「あーら、アル、アンタったら17歳になってまだ童貞だったのねぇ。」
ホーク「ははっ、お前の姉さんとはえらい違いじゃねぇか。今頃お前の姉さん、ナイトハルトと次代のローザリアを担う子作りの真っ最中だぜ。」
それに加担するように旅の踊り子バーバラ、サンゴ海の海賊キャプテン・ホークも話の輪に入ります。
アルベルト「バーバラにホークさんまで・・・姉さんと殿下がそんな事やってるなんて、デタラメ言わないでくださいよ!」
バーバラ「うふっ、必死な表情ってことは図星ね!」
アルベルト「だーかーらー、違いますって!」
おやおや、アルベルトの童貞話でパブは大いに盛り上がっているようです。
しかし、その話に顔を赤らめながらテーブルの端で聞いている女性も・・・迷いの森の番人で実はバファル帝国の皇女でもあるクローディアです。
彼女は古代リガウ帝国の血を引く一匹狼の冒険家、グレイと同じテーブルに座っており、話の輪には入ろうとしない物静かな女性でした。
グレイ「クローディア・・・顔が赤いぞ?」
クローディア「・・・わたし、ああいう恥ずかしい話は嫌い。それに、何だか気分が悪くなるの。」
グレイ「お前、メルビルで海賊たちと楽しくやっていたじゃないか。それに旅先ではトカゲやクマとは仲が良さそうにやってただろ。」
クローディア「ブラウやゲラ=ハを人間と同じにしないで。」
文明世界とは隔離された環境で育った彼女は、動物との接し方には長けているものの、人間相手には無愛想に接しがちでした。
そこへ、アルベルトの童貞話の輪から離れたクローディアとグレイの2人に、興味半分で酒を飲み、見事に酔っ払ったタラール族の少女アイシャが輪に混ぜようと試みます。
アイシャ「あー、グレイにクローディアも一緒に話そうよ〜。折角サルーイン倒したんだから、たまにはこっちで盛り上がらなきゃ。」
クローディア「アイシャ、あなたお酒臭いわ・・・ごめんなさい、わたしお酒は飲んだ事無いの。」
グレイ「ただの酒じゃないな・・・何を飲んだんだ?」
アイシャ「えーっとね、ジャミルがクジャラート一強力なお水を持ってきたからって言って、飲ませてくれたのぉ!」
お水と彼女は言いますが、飲んだ後の変化からして恐らく酒でしょう。
グレイ「興味半分で酒を飲むから、正気を失ってそういう事になるんだ。次からはもう少しアルコール度数の低い酒にするんだな。」
クローディア「グレイ、お酒は20歳になってからよ。帝国の法律にはそう書いてあったわ。」
グレイ「リガウ島にはそんな法律は無かったが。」
アイシャ「もー、そんな事どうでもいいからこっちおいでよ!いまアルの話で盛り上がってるところだしさぁ、みんなクローディアとグレイのこと待ってるよ。」
クローディア「あっ、ちょっと・・・」
グレイ「ふう・・・」
あまり乗り気ではない2人を半ば強引に連れ出そうとするアイシャ。
さすがの彼女達もこれには従うしかありませんでした・・・


アイシャ「皆さん、ちゅうもーく!今回の主役、グレイとクローディアがアルの童貞を切るお手伝いをしてくれるそうでーす!」
ジャミル・ホーク・シフ・バーバラ「イェェェーイ!!!」
アイシャのとんでもない一言で、パブの空気が一気にヒートアップします。
アルベルト「はっ?!何ですかそれは!」
クローディア「?!勝手な事言わないで!」
赤面する2人。
グレイ「・・・本当なのか?」
完全に酒が回ったアイシャを筆頭に、ジャミル、ホーク、シフ、バーバラの5人が残りの3人をはやし立てます。
あまりにも突然すぎる出来事に、困惑するアルベルトとクローディア。
一方のグレイは・・・おや、興味がありそうな顔をしています。
グレイ「・・・悪くない。ジャミル、お前が持ってきた水をくれ。」
ジャミル「おおっ、頼むぞグレイ!」
彼に”クジャラート一強力な水”の入った瓶をジャミルが手渡します・・・いったい何をするのでしょうか?
グレイ「クローディア、すまんが協力してもらう。お前には悪いが、アルベルトが17歳になって未だに童貞なのが俺には我慢できない。」
クローディア「・・・グレイまで・・・わたしは嫌よ!」
アルベルト「私も嫌ですよ、いくらクローディアさんが旅の仲間とはいえ、そんなみだらな事は出来ません!」
グレイ「それはどうだろうな・・・」
言った後、グレイがその“水”を口に含みます。
彼の行動を不審に思うクローディアでしたが、その瞬間・・・
クローディア「・・・むうっ?!」
5人「おぉぉお〜っ!!!」
何とお互いの唇を合わせ、口移しであの水をクローディアに飲ませてしまったのです!
グレイの予測不可能な行動に、アルベルトは目を白黒させるばかり。
酒を飲んだクローディアはその場にふにゃふにゃと倒れこんでしまいます。
グレイ「・・・ふぅ・・・おいアルベルト、お前も少しは女を覚えろ。これからのローザリアはお前が必要になってくるんだ、女との接し方の一つや二つを知らんようでは話にならん。」
ホーク「グレイ、よく言った!それでこそ男ってもんだ!」
グレイ「それにアイシャ、クローディアが一度も酒を飲んだ事がないというのは真っ赤な嘘だ。というのも、ローバーンでジャンが一度だけ彼女に飲ませた事がある。よほど強力な酒だったのか性格が豹変して、宿屋でジャンから一滴も残らず搾り取った。だがそれにとどまらず、一緒に飲んでいたモニカやミリアムもその後、酔ったクローディアに完膚なきまでに叩きのめされたそうだ。それほど凶悪な女に変貌するから、アルベルトにはいい薬だろう。」
グレイの話を聞いていたアルベルト達に悪寒が走ります。
シフ「ご愁傷様だねぇアル、初めての相手が帝国の皇女で魔性の女・・・短い間だったけど、楽しかったよ。」
アルベルト「なんてこと言うんですかシフ、勝手に殺さないでください!」
バーバラ「ほらほら、そんな事言ってる暇はないわよ。魔性のお姉さんがお目覚めのようね。」
ジャミル「アル、死ぬなよ!」
ホーク「アル、生きて帰れたらもう一杯飲むぞ!」
アイシャ「アルだけずるいなぁ、わたしもクローディアと一緒に・・・むうぅっ?!」
いきなりキスをして、深々と舌を絡める女性・・・変貌したクローディアがアイシャに襲い掛かりました。
その目は虚ろで、かつてのサルーインの僕・ミニオンを髣髴させるような狂気じみた笑いがアルベルトを凍りつかせます。
先ほどの一撃で昏倒したアイシャ、次の標的は誰でしょうか・・・無論他の5人はクローディアと距離を置いています。
アルベルト「父上、母上、姉さん・・・私をお守り、ひいっ?!」
クローディア「アルベルト・・・あなた、そんな事言ってるからいつまでたってもシスコンって言われるのよ。そんな軟い事言ってるようじゃ、ブラウやゲラ=ハ以下ね!」
アルベルトの胸倉をつかみ、普段の目立つのが嫌いな彼女からは想像も出来ないような言葉のクローディア。
アルベルト「あ・・・あ・・・」
クローディア「今夜はわたしがあなたを叩き直してあげるわ、覚悟しなさい。」
アルベルト「そっ、そんなっ・・・?!」
彼が目を少し下に追いやると、彼女の上着の隙間からバーバラやシフに引けを取らないほどの豊満な胸の谷間が映ります。
うっすらと汗をかいた艶かしい白い肌・・・それを見てアルベルトの股間が反応したのを、クローディアが見逃さないはずがありません。
クローディア「あなた、さっきからどこ見てるの?!嫌らしい目でわたしを見たわね!」
アルベルト「ごっ、誤解ですよ!」
クローディア「じゃあ、そのズボンの中で膨らんでるものは何!?もう許さないわ。今日は絶対に寝かせない。」
アルベルト「かっ、勘弁してくださいっ、クローディアさん!」
昏倒したアイシャを除く5人が不安げに見守る中、クローディアはアルベルトを連れてパブの隣の宿屋へと連れて行ってしまいました・・・
その宿屋ではホークが言っていたように、アルベルトの姉、ディアナがすでにローザリア皇太子殿下、ナイトハルトと次代のローザリアを背負って出る将来を持つ子を作るために奮闘中です。
別の部屋では、『騎士団の盾』の異名を持つハインリヒの後継者、ラファエルとその妻コンスタンツも子作りの真っ最中だとか・・・


ジャン「いやぁ、皆さんお揃いで・・・って、あれ、クローディアさんとアルベルト君は?」
8人がパブに集まっていると聞いて現れたのはバファル親衛隊のジャンです。
彼の目当ては勿論クローディアですが、彼女はすでに酔っ払いながらアルベルトを宿屋に連れ込んでしまっています。
ジャミル「ようジャン、クローディアならアルと一緒に宿屋で今頃ヤリまくりだぜ。」
ホーク「・・・アルの奴、干物みたいにならなけりゃいいんだがな。」
ジャン「ほっ、本当ですか?!へへっ、じゃあ早速・・・(シャキーン)ひっ!」
ジャンの危ない考えを察知し、首筋に刃を向けるグレイ。
グレイ「覗きに行こうって言うんじゃないだろうな。」
ジャン「ははっ・・・俺がそんなことするわけないだろ、グレイ・・・冗談は無しだぜ?」
グレイ「なら・・・俺も連れて行け。クローディアの護衛をするんだろう?」
ジャン「なんだグレイ、お前も覗き(シャキン)・・・な訳ないよな、あははっ・・・」

果たしてアルベルトの運命やいかに?!
そしてアルベルトはオトコになれるのか?! 続く

〜詩人所感〜

『酔っ払って性格変わる人・・・私もそんな人の餌食にされたこともあります。』


Kさまから、SSをいただきました〜
投稿板保管庫とどちらにアップしようかと悩みどころですが、取りあえずこちらにー
ありがとうございました〜

ぎゃらり〜へ