航宙士試験の会場の前。
そろそろ出てくるはずの睦月を待って、ぼんやりと空を眺めてる。
ぽつりぽつりと人が出始めて来たということは、試験が終わったのだろう。
「睦月…大丈夫かな。」
独り言を言ってみるものの不安。
ちゃんとした講習を受けてても、航宙士試験は落ちることがあるくらいなのだ。
問題集の過去問でいい点数取れたからといって受かるものでもない。
俺の悪ふざけのせいでちょっと勉強がおろそかになったかも知れないけど…睦月は努力家だと思う。
それでも、1回で受かるとはちょっと思えないのも事実。
まあ、結果がどうあれ…睦月にはそばにいてくれないと、困る。
「…礼二さん…」
そんなとりとめのない考えを打ち破る声。
「お、どうだった?」
沈んだ声に視線を向けると、暗い顔の睦月。
その顔を見ただけで結果はたやすく予想が付いた。
…ああ、やっぱり今回はダメだったか…
「…ごめんなさい。」
睦月がしょんぼりと肩を落とす。
「あたし、勉強不足…でした…」
肩が小刻みに震えてる。
「せっかく、試験受けさせてもらったのに…」
うつむいて、表情はよく分からないけど、どんな顔してるかは想像できる。
「れい…じさ!」
だから、睦月の身体をぐいっと抱き寄せた。
「なにも、一人で我慢してなくていいんだぞ。睦月。」
耳元に優しくささやく。
「俺だって、こうして胸貸してやることくらいは出来るんだからさ。」
なんていうか、自分でも恥ずかしくなるような感じだけど…
「だいたい、試験なんかまた受ければいいさ。俺にまかせとけって。」
睦月の肩の震えが止まらなくなる。
「…う…うぇ…うぇぇぇん…」
俺の胸に顔を埋めて睦月が泣きはじめる。
「そうそう、辛かったら泣けばいいんだ。落ち着くまでこうしててやるよ。」
よしよしと睦月の頭を撫でてやる。
周りを通ってく人の目がちょっと恥ずかしいが、若い男女から向けられる羨望の眼差しが少し誇らしい。
「うっ…うっ…」
ちょっぴり、落ち着いてきたかな?
「俺はさ、睦月が航宙士に、もしなれなくても…そばにいてくれればそれでいいんだからさ。」
…決め台詞と言えばちょっとわざとらしいけど、本音を正直に話す。
「!!!…れ、いじさ…、ふえぇぇぇ…」
これ以上泣かせるつもりはなかったんだけど、睦月は止まらなくなっちゃったみたいだ。
「…な、せっかく大きな町に来たんだし、今日はこれから映画でもみてさ、おいしいものでも食べよ、な?」
たまには普通の恋人っぽくしてみようと提案する。

で、睦月が落ち着いたところで、映画館に入ったわけだが…
カップル向けの話題の映画ということで選んだまではよかった。
恋愛ものの、男としては背中がかゆくなるような映画ってところまでは全然問題なかった。
睦月の手をそっと握ってやったりなんかして、恋人気分を満喫してみたり…
だが、ストーリーが進むにつれて映画がどうにもハマリ過ぎてて痛いのだった。
それほど恵まれてない家庭の出のヒロインが、男主人公に励まされて士官学校に入ろうというあたりでかなり痛い。
おまけに、不運な出来事が重なって結局試験に受からなかったヒロインを、男主人公が優しく包み込んで…というあたりは…その場から逃げ出したくなった。
やや落ち着かない俺の手を睦月の手がきゅ、と握る。
「…?」
睦月の方をちょっと見ると、うるうるした眼で俺のことをじっと見てる。
映画は、ちょうどクライマックス。
ちらりと周りを見回して、俺も覚悟を決めた。
「睦月…むつき…」
くいくいと指で招く。
そして、素直に近づいてきた睦月の唇に、スクリーンの恋人たちに合わせて唇を重ねる。
ぎゅっと俺の手が強く握られる。
しばらくのキスの後、我に返ると映画はエピローグ。
「…れいじ、さん…ちょっと…さきに、出てます。」
スタッフロールが始まる前に睦月が席を立つ。
「…ロビーで、まってて、ください…」
耳元にささやいて、そのまま歩み去る。

「…どうしたんだ?」
言われた通りにロビーで待っているものの、なかなか睦月が戻ってこない。
心配になって、睦月にもたせてあるセルラーにかけてみようかと思ったところで鳴りだす俺のセルラー。
「もしもし、睦月?」
睦月からの着信だったので、どうしたのか問いただそうと慌てて問いかける。
「…礼二さん…このビルの、42階のおトイレまで…来てください。」
どういうことかと思って聞き返そうとしたところで切れる。
いつもの睦月の声だったけど、おかしなところに呼び出されたので、ものすごく心配になってくる。
急いで向かった指定の場所には「清掃中」の立て札。
もともとオフィスが入っている階なのか、休日である今日はひと気が全然ない。
いろいろと心配が募って、睦月のセルラーにかけ返す。
「あ、礼二さん…来てくれた?」
うれしそうな声。
「どこだ?睦月。」
女子トイレとか言われても、正直困る。
「女子トイレ、奥から2番め…今日は、この階人いないみたいだし…清掃中出してるし…だいじょうぶ、だよ。」
それだけ言ってまた切られた。
「…な、なんなんだよ。」
いろいろと悩まないではないが、とにかく睦月の顔を見ないことには先に進まないような気がして、俺は意を決して指定された個室にむかった。
「…鍵、かけてないよ、礼二さん。」
個室の中から聞こえる睦月の声。
「むつ…き…!」
ドアを開けて、どういうことだと問いかけようとして言葉が続かなくなる。
便器の上にスーツ姿の睦月。
それはいい。
だが、スカートをたくし上げて脚を大きく広げ、覆うものが何もない股間を俺に向けて挑発するかのごとくに突き出しているその格好はどうだ。
おまけに、太腿にもお尻にも、睦月の大切な場所から溢れ出した蜜がきらきら光ってて…
「れいじ、さん…私…おかしく、なっちゃいそう、です。」
俺もこの光景見てるとおかしくなりそうだが…
「映画で、手、つながれた時にもう、どんどん熱く…なっちゃってたのに…キス、されて…こうなっちゃい、ました…」
ソックスにまで染みが着いてると言うことは、相当な…ものだったんだな…
ちらりと足に引っかかってるぐしょぐしょのショーツを見やる。
「軽蔑されるほど、いやらしい女の子かもしれないですけど…礼二さんが、好きです。」
切羽詰まって泣きそうな声。
さっきまでいろいろあったせいで、抑えがきかなくなってるらしい。
「睦月…そんなこと言われたら…俺だって優しく…できないぞ?」
今日はこの傷心のお姫さまをとことんお慰めするつもりだった。
…だから、睦月が、望むのなら…


人気投票1位はまたまた睦月さんー
…なにやら我慢ができないご様子(爆)

ぎゃらり〜へ